身の回りが物語のスイッチに!Makey MakeyとScratchでみんなで遊ぶプログラミング
身近なものが動き出す不思議な体験:Makey MakeyとScratchで物語を作ろう
子供たちがプログラミングを「お勉強」ではなく「遊び」として自然に楽しむための方法は様々あります。中でも、身の回りにある意外なものがコンピューターと繋がって反応するという体験は、子供たちの強い好奇心を引き出します。今回は、そんな体験を可能にする「Makey Makey」というツールと、視覚的プログラミング環境の「Scratch」を組み合わせ、子供たちが協力してオリジナルの物語を作り、それを身の回り品で操作するという、楽しく創造的なプログラミング活動をご紹介します。
この活動は、準備が比較的簡単で、複数の子供たちが一緒に取り組むのに適しています。技術的な難しさよりも、アイデアを出し合い、協力して形にする過程に重点を置くため、プログラミング初心者のお子さんや、グループでの活動を求めている方にもおすすめです。
この活動で育める子供たちの力
この「身の回り品で操作する物語作り」というプログラミング活動を通して、子供たちは様々な力を育むことができます。
- 創造力と表現力: どんな物語にするか、キャラクターをどう動かすか、どんな身の回り品をコントローラーにするかなど、自由な発想でアイデアを形にする力が養われます。
- 論理的思考力と問題解決能力: 物語の展開に合わせて、どの操作で何が起こるかという順序立てて考える力、そして思った通りに動かない時に原因を探し、解決策を見つける力が育まれます(プログラミングにおけるデバッグの基礎)。
- 協調性とコミュニケーション能力: グループで一つの物語を完成させるために、アイデアを共有し、役割を分担し、互いに協力し合う経験は、コミュニケーション能力やチームワークを育む上で非常に重要です。
- デジタルと現実世界の繋がりを理解する: 物理的なモノがコンピューター上の動きと連動するという体験は、テクノロジーが身の回りにあるものとどのように繋がっているのかを肌で感じ、理解するきっかけとなります。
準備するもの
この活動を始めるために必要なものは以下の通りです。
- Makey Makeyキット: Makey Makey Classicなどの基本キットがあれば十分です。これは、身の回りにある導電性(電気を通す性質)のあるものを、コンピューターのキーボードやマウスの代わりにするための小さな基板とワニ口クリップのセットです。
- コンピューター: Windows、macOS、Chromebookなど、Scratchが動作するコンピューターが必要です。インターネットに接続できる環境が望ましいですが、Scratchデスクトップ版を使用する場合はオフラインでも可能です。
- Scratch環境: ScratchのWebサイト(https://scratch.mit.edu/)またはデスクトップ版アプリケーションを利用します。アカウントを作成すると、作品の保存や共有ができます。
- 導電性のある身の回り品: バナナ、リンゴ、粘土、アルミホイル、鉛筆の芯、水の入ったコップなど、電気を通すものであれば何でもコントローラーとして使えます。子供たちに身の回りから面白そうなものを選ばせると、活動への興味が高まります。
- ワニ口クリップ: Makey Makeyキットに含まれていますが、予備があると便利です。
- 物語のアイデアをまとめるもの: 紙、ペン、ホワイトボードなど。物語の登場人物や展開を書き出すために使用します。
活動の手順:みんなで物語を作り、動かそう
ここでは、数人のグループでこの活動を行う場合の具体的な手順をご紹介します。
ステップ1:物語の企画会議(約30分〜1時間)
まず、グループでどんな物語を作るか話し合います。登場人物、舞台、あらすじ、そして物語の中で特に重要なシーンやキャラクターの動きなどを自由にアイデアを出し合います。
- 紙やホワイトボードに登場人物を描いたり、シーンごとの絵コンテのようなものを描いたりしながら進めると、子供たちはイメージしやすくなります。
- この時に、「この場面では、リンゴに触ったらキャラクターがジャンプするようにしよう」「バナナに触ったら敵が出てくるようにしよう」など、どの身の回り品でどんな操作をするか、大まかに決めておくと後の作業がスムーズになります。
ステップ2:Scratchで物語の舞台とキャラクターを用意する(約30分〜1時間)
企画した物語に基づいて、Scratch上で舞台となる背景と、登場するキャラクター(スプライト)を用意します。
- Scratchのライブラリから選んでも良いですし、自分たちで絵を描いてオリジナルのスプライトを作ることもできます。
- 背景もScratchのライブラリから選んだり、インターネット上の画像を取り込んだり、自分たちで描いたりできます。
ステップ3:物語の動きをプログラムする(約1時間〜1時間30分)
Scratchのブロックを使って、物語の展開に合わせてキャラクターを動かしたり、セリフを表示したり、音を鳴らしたりするプログラムを作ります。
- ポイント: 各操作のきっかけとなるイベントブロックには、「〇〇キーが押されたとき」ブロックを使用します。例えば、「スペースキーが押されたとき」に主人公がジャンプするプログラムを組みます。企画会議で決めた「リンゴに触ったらジャンプ」を実現するために、ここでは「スペースキーが押されたとき」を選んでおくのです。
- グループ内で、「〇〇君はキャラクターを動かすプログラム担当」「△△さんはセリフを表示するプログラム担当」のように役割を分担すると、協力して効率的に作業を進められます。
ステップ4:Makey Makeyと身の回り品を接続する(約15分)
コンピューターにMakey MakeyボードをUSBケーブルで接続します。次に、企画会議で決めた身の回り品を、ワニ口クリップを使ってMakey Makeyボードの対応する端子に接続します。
- 例えば、リンゴをスペースキーのコントローラーにするなら、Makey Makeyの「Space」端子にワニ口クリップを繋ぎ、そのワニ口クリップのもう一方の端をリンゴに挟みます。
- Makey Makeyを使う人が必ず触っていなければならないのが「Earth」端子です。一人がEarth端子にワニ口クリップを繋いで持ち、他の人はその人に触れるか、または別のワニ口クリップでEarth端子と繋がった金属などに触れるようにします。みんなで手をつないで輪になるという方法も面白いです。これは電気の回路を完成させるために必要なことです。
ステップ5:テストと調整(デバッグ)(約30分〜1時間)
Scratchで作ったプログラムと、Makey Makeyで繋いだ身の回り品コントローラーを使って、物語が思った通りに進むかテストします。
- 「リンゴに触ったのにジャンプしない」「バナナに触ったら変な動きをした」など、うまくいかない部分がきっと出てきます。
- グループみんなで協力して、「Scratchのプログラムは正しいか?」「Makey Makeyの接続は間違っていないか?」「身の回り品はちゃんと導電性があるか?」などを確認し、原因を探って修正します。このデバッグの過程は、論理的思考力と問題解決能力を育む絶好の機会です。
ステップ6:発表会!(約30分〜)
完成した物語を、Makey Makeyで接続した身の回り品コントローラーを使って発表します。他のグループや大人に見てもらいましょう。
- 発表者、コントローラー操作担当、物語のナレーション担当など、役割を決めて発表すると、より一体感が生まれます。
- 発表の際には、どんな物語を作ったのか、どの身の回り品でどんな操作ができるのかなどを説明すると、見ている人も楽しめます。
発展的なアイデア
この活動は、子供たちの興味に合わせてさらに発展させることができます。
- 効果音やBGMの追加: 特定のシーンや操作に合わせて、Scratchの音ブロックを使って効果音やBGMを鳴らすようにプログラムを加える。
- 複数のシーン展開: 物語をいくつかのシーンに分け、それぞれのシーンで使う背景やキャラクター、操作方法を変える。
- 分岐のある物語: 選択肢によって物語の展開が変わるインタラクティブな物語に挑戦する。例えば、特定のアイテムに触れるか触れないかで、その後のストーリーが変わるようにプログラムする。
- オリジナルのコントローラーを工夫: 粘土でキャラクターの形を作ってそれに触れるようにしたり、アルミホイルで大きなスイッチを作ったりするなど、よりユニークなコントローラーを考える。
まとめ
Makey MakeyとScratchを使ったこの物語作り活動は、子供たちが身近なものをテクノロジーと結びつけ、遊びながらプログラミングの基本的な考え方や、共同で一つのものを作り上げる楽しさを体験できる素晴らしい機会です。複雑な技術は使わず、子供たちの自由な発想とグループでの協力を中心に進められるため、プログラミングに初めて触れるお子さんでも、きっと夢中になって取り組むことでしょう。
この活動を通して、子供たちは物語を考え、それを形にする創造力、仲間と協力して課題を乗り越える協調性、そしてデジタルなツールを使いこなす基礎的なスキルを自然と身につけていきます。ぜひ、お孫さんや地域のお子さんたちと一緒に、身の回り品が魔法のスイッチになる不思議な物語作りに挑戦してみてください。