動きとボタンで遊ぶ!micro:bitを使った共同コントローラー作り
micro:bitを使った遊びを通じたプログラミング学習の可能性
プログラミング学習は、コンピューター上でコードを書くだけではありません。身の回りにあるモノを動かしたり、操作したりすることを通して、より直感的で遊び心のある学びが可能です。特に、小型のコンピューターボード「micro:bit」は、その手軽さと豊富な機能を活かして、子供たちが複数人で協力しながら楽しくプログラミングを学ぶのに適したツールの一つと言えます。
本記事では、micro:bitを使った「共同ゲームコントローラー作り」という活動を通じて、子供たちがどのように遊びながら学び、協力する力を育むことができるかをご紹介します。
なぜmicro:bitでゲームコントローラー作りなのか
micro:bitには、ボタン、加速度センサー、光センサー、温度センサーといった入力機能や、LEDディスプレイ、スピーカー、入出力ピンといった出力機能がコンパクトにまとまっています。これらの機能を組み合わせることで、様々なものづくりが可能になります。
ゲームコントローラー作りは、これらの機能を使って「何かの動き(入力)が、特定の操作(出力)につながる」というプログラミングの基本的な考え方を体験的に学ぶのに最適です。例えば、「ボタンが押されたらゲーム内のキャラクターがジャンプする」「本体を傾けたらキャラクターが左右に動く」といったように、物理的な操作とプログラム上の処理を結びつけることができます。
この活動がグループでの取り組みに適している理由はいくつかあります。まず、一つのコントローラーを作る過程で、デザイン担当、プログラミング担当、テスト担当など、役割を分担することができます。また、完成したコントローラーを使って皆でゲームをプレイすることで、共同制作の成果を共有し、楽しむことができます。問題が発生した場合(例:思ったように動かない)も、皆で相談しながら解決策を探すプロセスは、協力やコミュニケーション能力を育む良い機会となります。
共同ゲームコントローラー作りの具体的なアイデア例
ここでは、加速度センサーを使った簡単な傾け操作コントローラーを作るアイデアを中心に説明します。
アイデア例:傾け操作で何かを動かすコントローラー
micro:bitの加速度センサーを利用して、本体の傾きに応じて信号を送るコントローラーを作成します。このコントローラーは、例えば画面上のキャラクターを左右に動かしたり、迷路ゲームでボールを転がしたりするために利用できます(※画面側のプログラムは別途必要ですが、今回はコントローラー側の作成に焦点を当てます)。
準備するもの
- micro:bit本体: 人数分またはグループ数分
- micro:bit用USBケーブル: micro:bitの数だけ
- PCまたはタブレット: プログラミング用
- (オプション)micro:bit用電池ボックスと単4電池: 作成したコントローラーをPCから切り離して使う場合
特別な電子部品や複雑な配線は必要ありません。micro:bit本体とそれをプログラミングする環境があれば始められます。
作り方の簡単なステップ
- テーマ決定と役割分担: どんなゲームのコントローラーを作るか、話し合って決めます。誰がプログラミングをするか、誰が動作テストをするかなど、役割を分担します。
- MakeCodeを開く: Webブラウザでmicro:bit公式のプログラミングエディター「MakeCode」にアクセスします。ブロックを組み合わせて直感的にプログラミングができます。
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基本的なプログラムを作成: 加速度センサーの情報を読み取るブロックと、その情報に応じて何か表示するブロックを組み合わせます。
- 例:本体を左に傾けたらLEDに「<」を表示、右に傾けたら「>」を表示。
ずっと もし 加速度 (x) が -200 より小さい ならば LEDに表示 (<) そうでなくて もし 加速度 (x) が 200 より大きい ならば LEDに表示 (>) そうでなければ LEDをすべて消す
* (注釈)上記の「加速度 (x)」は左右の傾き、「-200」や「200」は傾きのしきい値を表す値です。LED表示は簡単な例で、実際にはこの傾き情報を他のデバイスに無線(Radio機能)で送るプログラムなどを追加することで、ゲーム操作に利用します。 -
プログラムを転送: 作成したプログラムをmicro:bitにダウンロードし、USBケーブルで接続したmicro:bitにコピーします。
- テストと改良: 実際にmicro:bitを傾けてみて、思った通りにLEDが表示されるか確認します。動きが敏感すぎる、あるいは鈍感すぎるといった場合は、プログラムの数値(上記の例の-200や200)を調整します。
- 共同での活用: 完成したコントローラーを複数人で使ったり、他のグループが作ったコントローラーと比較したりして遊びます。必要に応じて、コントローラーに装飾を施すなど、物理的な側面での工夫も加えることができます。
この活動から得られる学び(教育的意義)
共同でのゲームコントローラー作りは、子供たちに様々な学びを提供します。
- 論理的思考力と問題解決力: 「入力(傾きやボタン)がどのように出力(LED表示や信号送信)につながるか」を考えることは、まさにプログラミングにおける論理的な思考プロセスです。また、意図した通りに動かない時に原因を特定し、プログラムを修正する作業(デバッグ)を通じて、問題解決のスキルが養われます。
- 創造性と表現力: どんなコントローラーにするか、どのような操作で何をしたいかを自由に発想する過程は、子供たちの創造性を刺激します。シンプルなmicro:bitを使って、ユニークなコントローラーを形にすることは、自分のアイデアを具体的に表現する良い機会となります。
- 協調性とコミュニケーション能力: グループで一つのものを作るためには、互いの意見を聞き、役割を分担し、協力して作業を進めることが不可欠です。どのように協力すれば効率的に作業が進むか、問題が発生したときにどう話し合うかといった経験は、社会性やコミュニケーション能力の向上につながります。
- 物理とプログラミングの繋がり: センサーといった物理的な入力装置が、どのようにデジタルな信号に変換され、プログラムによって処理されるのかを体験的に理解することができます。これは、目に見えないプログラミングの世界と、身の回りにある物理的な世界との繋がりを学ぶ上で非常に有効です。
まとめ
micro:bitを使った共同ゲームコントローラー作りは、プログラミングの基本的な考え方を学びながら、子供たちが協力し、創造性を発揮できる魅力的な活動です。準備も比較的簡単で、高価な専門機器を必要としないため、家庭や地域の集まり、学校など、様々な場所で実施しやすいと言えます。
子供たちが遊びの中で自然と論理的に考え、友達と協力して何かを作り上げる経験は、将来にわたって彼らの力強い財産となるでしょう。ぜひ、micro:bitを使ったものづくりを通じて、子供たちと一緒にプログラミングの楽しさに触れてみてください。