micro:bitで動きと音に反応!共同で作るインタラクティブ作品アイデア
micro:bitとセンサーで広がるプログラミングの可能性
プログラミング学習は、コンピュータの画面の中だけでなく、私たちの身の回りの世界と繋がることで、より楽しく、創造的な活動になります。マイクロビット(micro:bit)は、小さなコンピューターボードですが、様々なセンサーや光るLED、ボタンなどを備えており、物理的なものづくりとプログラミングを組み合わせた学習に非常に適しています。
特に、micro:bitに内蔵されているセンサーを活用すると、光や音、動きといった外界からの情報に反応するインタラクティブな作品を作ることができます。これは、子供たちが原因と結果の関係や、コンピューターがどのように外界を認識し、応答するかを直感的に理解する助けとなります。
ここでは、micro:bitのセンサーを使ったプログラミングを、複数人で協力して行うグループ活動として紹介します。単にプログラミングのスキルを学ぶだけでなく、アイデアを出し合い、役割を分担し、一つの作品を完成させる過程で、協調性やコミュニケーション能力も育むことができるでしょう。
micro:bitの主なセンサー機能
micro:bitには、特別な機器を用意しなくてもすぐに使える、便利なセンサーがいくつか搭載されています。読者の方が指導する際にも、子供たちにこれらのセンサーがどのような働きをするのかを分かりやすく説明することで、興味を引き出すことができます。
- 加速度センサー: micro:bitがどれくらい速く動いているか、どの方向に傾いているかを感知します。例えば、micro:bitを振る、傾けるといった動きをプログラムに反映させることができます。
- 光センサー: micro:bitの表面にあるLEDディスプレイを使って、周囲の光の明るさを測ることができます。明るさに応じて表示を変えるといったプログラミングが可能です。
- 温度センサー: micro:bit周囲の温度を測ることができます。温度によって何か表示を変えたり、音を鳴らしたりできます。
- マイク(新しいバージョンに搭載): 周囲の音を感知し、音の大きさを測ったり、特定の音に反応させたりすることができます。拍手や声に反応する作品作りなどに利用できます。
これらのセンサーからの情報(入力)を使って、LEDに絵や文字を表示したり、音を鳴らしたり、無線で他のmicro:bitと通信したりといった応答(出力)をプログラムするのです。
グループで挑戦!センサー活用インタラクティブ作品アイデア
micro:bitのセンサーを使ったインタラクティブな作品作りは、グループでの活動に最適です。それぞれのメンバーがアイデアを出し合い、得意なことを活かして役割分担することで、より複雑で面白い作品に挑戦できます。
アイデア例1:音に反応する光のアート
- 概要: 周囲の音(例えば拍手や声の大きさ)に反応して、micro:bitのLEDディスプレイの光り方や表示される絵が変わるアート作品を制作します。
- 必要なもの: micro:bit本体(マイク付きのバージョンが望ましい)、USBケーブル、プログラミング用PC/タブレット、MakeCodeエディター(Webブラウザで使用)、作品の装飾材料(厚紙、色鉛筆、ペン、ハサミ、のりなど)。
- グループでの役割分担:
- アイデア担当: どんな音に、どのように反応させたいか、アートとしてどんなデザインにするかの全体像を考えます。
- プログラミング担当: MakeCodeエディターを使って、音センサーの値を取得し、その値に応じてLEDの表示を制御するプログラムを作成します。
- アート担当: micro:bitを組み込むための台座や背景、装飾などを制作し、作品を魅力的に見せる工夫をします。
- テスト担当: 作成したプログラムや作品が、意図した通りに動くかを確認し、問題があればフィードバックします。
- 活動の進め方:
- チームで集まり、どのような「音」に、どのような「光」で反応させるか、作品のテーマやデザインについて話し合い、アイデアをまとめます。
- アイデアに基づき、役割分担を決めます。
- プログラミング担当はMakeCodeエディターでコーディングを開始します。例えば、「ずっと」ブロックの中に「入力」カテゴリの「音の大きさ」ブロックを使い、その値がある基準値を超えたら「基本」カテゴリの「アイコンを表示」ブロックで星を表示する、といったプログラムを組みます。音の大きさに応じて様々なアイコンやアニメーションを表示するように工夫することも可能です。
- アート担当は作品の外観を制作します。micro:bitをどのように組み込むか、センサー(マイク)部分を塞がないように注意しながらデザインします。
- テスト担当は、プログラムをmicro:bitに転送し、音に反応するか、アート部分と組み合わせた時に問題がないかなどを確認します。
- 全員で協力して最終調整を行い、作品を完成させます。
- 教育的意義: 音という「入力」に対する光という「出力」の関係、イベント処理(音の大きさが特定の条件を満たしたら処理を行う)、条件分岐(もし音が大きかったら〜、そうでなければ〜)、共同での問題解決、創造性の発揮。
アイデア例2:動きで操作するジェスチャーゲーム
- 概要: micro:bitの加速度センサーを使って、ボードを傾けたり振ったりする動きで操作する簡単なゲームやツールを制作します。例えば、micro:bitを振るとランダムな数(サイコロ)、傾けると矢印の方向が変わるコンパス、といったものが考えられます。
- 必要なもの: micro:bit本体、USBケーブル、プログラミング用PC/タブレット、MakeCodeエディター(Webブラウザで使用)、必要に応じて装飾やゲーム盤など。
- グループでの役割分担:
- ゲームデザイン担当: どのような動きで何を表現するか、ゲームのルールやクリア条件などを考案します。
- プログラミング担当: 加速度センサーの値(傾き、揺れなど)を取得し、それに応じてLED表示や音を制御するプログラムを作成します。
- アート/ツール担当: ゲームをより面白くするためのボードや道具を制作したり、micro:bitを特定の形に固定する方法を考えたりします。
- テスト担当: 動きに対する反応が正確か、ゲームとして成立するかなどをテストします。
- 活動の進め方:
- どのようなジェスチャーゲーム/ツールを作るか、チームで話し合い、コンセプトを決定します。
- 役割分担を決めます。
- プログラミング担当はMakeCodeでコーディングします。例えば、「入力」カテゴリの「ふる」ブロックを使ったサイコロプログラムや、「入力」カテゴリの「傾き (roll)」ブロックを使って傾きに応じて「基本」カテゴリの「文字列を表示」で方向を表示するプログラムなどを組みます。
- アート/ツール担当は、ゲームに必要な物理的な要素を準備・制作します。
- テスト担当は、実際にmicro:bitを動かしてみて、プログラムが期待通りに反応するか、ゲームとして楽しめるかを確認します。
- 協力して調整を行い、作品を完成させます。
- 教育的意義: 動きという「入力」に対する反応という「出力」、座標や角度の概念(傾き)、条件分岐(どの方向に傾いたら)、乱数(サイコロ)、協調性、論理的思考力、問題解決能力。
活動を成功させるための準備と進め方
これらの活動をスムーズに進めるためには、事前の準備と、子供たちが協力しやすい環境作りが重要です。
- 必要なものを準備する: 上記の「必要なもの」リストを参考に、活動に必要なものを人数分またはグループ数分揃えます。micro:bit本体やPC/タブレットが複数必要になる場合があります。
- プログラミング環境を確認する: MakeCodeエディターはWebブラウザ上で動作するため、インターネット環境が必要です。利用するPCやタブレットでMakeCodeサイト(makecode.microbit.org)にアクセスできるか確認しておきます。ブロックプログラミングなので、キーボード入力が苦手な子供でも直感的に操作できます。
- micro:bitの基本操作を学ぶ: もしmicro:bitを使ったことがない場合は、事前に基本的なプログラミング(LEDに表示する、ボタンに反応させるなど)を試しておくと、子供たちをサポートしやすくなります。MakeCodeのウェブサイトにはチュートリアルも豊富に用意されています。
- 活動の目的を共有する: 子供たちに、単にプログラミングをするだけでなく、グループで協力して一つのものを作り上げること、センサーを使って身の回りの現象とプログラムを結びつけることの面白さを伝えます。
- グループ分けと役割分担: 子供たちの興味や得意なことを考慮してグループ分けを行います。最初から役割を決めるのではなく、まずは全員でアイデアを出し合い、その後に自然な流れで役割が決まるように促すのも良いでしょう。役割分担は固定せず、途中で交代したり、複数の役割を兼任したりすることも可能です。
- 困ったときのヒントを用意する: 想定されるトラブル(プログラムがうまく動かない、アイデアが行き詰まるなど)に対する基本的な解決策やヒントをいくつか準備しておくと、子供たちが自力で乗り越える手助けになります。すぐに答えを与えるのではなく、考え方のヒントを示すようにします。
- 発表の機会を設ける: 完成した作品を発表する時間を設けることで、子供たちの達成感を高め、他のグループのアイデアから学ぶ機会にもなります。作品の工夫した点や、難しかった点、グループで協力したことなどを話してもらうと良いでしょう。
この活動から子供たちが得られる学び
このようなセンサーを活用したインタラクティブ作品のグループ制作活動は、子供たちに多くの学びをもたらします。
- プログラミング的思考: センサーからの入力を受け取り、それに基づいて適切な出力を決定するという過程は、コンピュータが情報を処理する基本的な考え方を学ぶ上で非常に有効です。順次処理、条件分岐、繰り返し、イベント処理といったプログラミングの基本的な概念を、具体的な体験を通して理解できます。
- 問題解決能力: アイデアを実現するためには、どのようにプログラムを組めば良いか、センサーの値をどう使うか、といった様々な課題に直面します。グループで協力し、試行錯誤しながらこれらの課題を解決していく過程で、問題解決能力が養われます。
- 創造性と表現力: センサーの反応をどのように作品に活かすか、どのように見せるか、といった点は、子供たちの自由な発想と創造性を引き出します。自分たちのアイデアを形にする喜びを体験できます。
- 協調性とコミュニケーション能力: グループで協力して一つの作品を作るためには、自分の意見を伝え、相手の意見を聞き、共通の目標に向かって協力する姿勢が必要です。役割分担や助け合いを通して、社会性やコミュニケーション能力が育まれます。
- 科学と技術への興味: 身の回りの音や動きといった物理現象が、センサーを通してデジタルな情報に変換され、プログラムによって制御されることを体験することで、科学や技術に対する興味や探究心を刺激します。
まとめ
micro:bitのセンサーを活用したインタラクティブ作品のグループ制作は、子供たちが遊び感覚でプログラミングや論理的思考、問題解決能力、そして協調性を育むための素晴らしい機会を提供します。高度な技術知識がなくても、簡単なブロックプログラミングと身近な素材を組み合わせることで、子供たちは自分たちのアイデアを形にする楽しさを存分に味わうことができるでしょう。
この活動を通して、子供たちがテクノロジーを「使う」だけでなく、自ら「作る」ことの面白さを発見し、未来への可能性を広げる一助となることを願っております。準備も比較的簡単で、少人数からでも始められますので、ぜひお孫さんや地域のお子様たちと一緒に挑戦してみてください。