光と音でメッセージ交換!micro:bitを使ったグループ学習のすすめ
身近な道具でプログラミング体験を
お子様やお孫様、地域の子供たちに新しい学びの機会を提供したいとお考えの皆様へ。プログラミングと聞くと難しく感じられるかもしれませんが、身近な道具を使って、遊び感覚で楽しく学べる方法はたくさんあります。今回は、小さなコンピュータボード「micro:bit(マイクロビット)」を使った、グループでのプログラミング学習アイデアをご紹介します。
micro:bitは、子供向けのプログラミング教育用に開発された、イギリス生まれの小さな基板です。手のひらサイズながら、LED(光る小さなランプ)表示、ボタン、傾きセンサー、明るさセンサー、温度センサーなどが搭載されており、外部の部品とつなぐこともできます。特に良い点は、複雑な配線なしに、これ一つで様々な動きや光、音を扱えることです。
micro:bitを使った「メッセージ交換」アクティビティ
このmicro:bitを複数台使い、グループで「光と音を使ったメッセージ交換」に挑戦するプログラミングアクティビティを提案します。これは、子供たちが互いに協力しながら、プログラミングの基本的な考え方や情報伝達の仕組みを体験できる活動です。
活動の概要
このアクティビティでは、子供たちをいくつかのグループに分け、それぞれのグループが「メッセージの送り手」と「メッセージの受け手」の役割を担います。
- 送り手: ボタン操作に応じて、micro:bitのLEDを特定のパターンで点滅させたり、特定の音を鳴らしたりするプログラムを作成します。
- 受け手: 送られてきた光の点滅パターンや音の回数を読み取り、それが何を意味するメッセージなのかを解読します。受け手側も、受け取った合図に対して光や音で応答するプログラムを作ることもできます。
例えば、「こんにちは」ならLEDをゆっくり3回点滅させる、「ありがとう」なら特定の音を短く2回鳴らす、といった簡単な「合図のルール」をグループで事前に決めておきます。
準備するもの
この活動に必要なものは比較的少なく、準備も簡単です。
- micro:bit本体(参加する子供たちの人数分、またはグループ数分あると理想的です)
- micro:bit用のUSBケーブル(プログラムを書き込むために必要です)
- micro:bit用の電池ボックスと単4形電池(PCから外して使う場合に必要です)
- プログラミングに使用するPCまたはタブレット(インターネットに接続できる環境が必要です)
- (任意)イヤホンやスピーカー(音をしっかり聞くため)
micro:bit本体は数百円から数千円で購入でき、セット商品も販売されています。特別なプログラミングソフトをインストールする必要はなく、Webブラウザ上で動作する専用のエディタを使用します。
活動の進め方(ステップ例)
- micro:bitに慣れる: まずはmicro:bitに触れてもらい、電源を入れる、LEDを光らせてみる、ボタンを押してみるなど、簡単な操作を体験します。
- プログラミング環境を知る: Webブラウザで開く「MakeCode(メイクコード)」というプログラミングエディタを紹介します。これはScratchのようにブロックを組み合わせてプログラムを作るため、文字入力が苦手な子供でも直感的に操作できます。
- 簡単なプログラムを作る: MakeCodeを使って、「Aボタンを押したらハートのマークを表示する」「Bボタンを押したらメロディーを鳴らす」といった簡単なプログラムを一緒に作成し、micro:bitに転送して実行してみます。
- メッセージのルールを決める: グループごとに、「どんな光や音の合図を、どんなメッセージにするか」を話し合って決めます。「赤く光ったらOK」「高い音2回で質問」など、子供たちのアイデアを活かしましょう。
- 送り手と受け手のプログラムを作る:
- 送り手チーム: 決めたルールに基づいて、ボタンが押されたら対応する光や音を出すプログラムを作成します。例えば、「ずっと」のブロックの中に「もしAボタンが押されたら」という条件ブロックを置き、その中にLED点滅や音を鳴らすブロックを組み合わせます。
- 受け手チーム: 送られてくる光や音を観察し、それがどのメッセージに対応するか判断する練習をします。プログラムとしては、例えば特定のタイミングでLEDが点滅したら「受け取った」と表示するなど、受信の確認や解読のヒントになるような表示を出すプログラムを作ることもできます。
- メッセージ交換を実践する: 作成したプログラムをmicro:bitに転送し、実際に離れた場所でメッセージ交換を試みます。うまく伝わらない場合は、光のパターンが見えにくい、音の回数が分かりにくいなど、原因をグループで話し合い、プログラムやルールを改善します。
- 役割を交代・発展させる: 送り手と受け手の役割を交代したり、より複雑なメッセージに挑戦したり、オリジナルの暗号を作ってみたりと、活動を発展させることができます。
グループで学ぶこと、教育的な意義
この「光と音を使ったメッセージ交換」アクティビティは、プログラミングの技術だけでなく、子供たちの様々な能力を育む上で多くの意義があります。
- 協調性とコミュニケーション能力: グループで共通の目標(メッセージを正確に伝えること)に向かって協力します。メッセージのルール決め、プログラムの分担、問題が起きた時の話し合いなど、自然とコミュニケーションが生まれます。
- 論理的思考力と問題解決力: 「どうすれば光や音で意図を正確に伝えられるか」と考え、そのためのプログラムの組み立て方を論理的に考えます。うまくいかない時に、どこに原因があるのかを見つけ、解決策を考える過程は、プログラミングのデバッグ(間違い探し)の訓練にもなります。
- 創造性と表現力: どんな合図にするか、どんなメッセージを送るか、プログラムでどう表現するかなど、子供たちの自由な発想を活かすことができます。
- プログラミングの基本概念: 「ボタンが押されたら(入力)」「光を点滅させる(出力)」「もし〜なら(条件分岐)」といった、プログラミングの基本的な構造を体験的に理解できます。
- 情報伝達の仕組みへの関心: 光や音が情報としてどのように伝わるのか、という仕組みに自然と興味を持つきっかけになります。
まとめ
micro:bitを使った「光と音のメッセージ交換」は、準備の手軽さ、グループでの取り組みやすさ、そして遊び感覚でプログラミングの基本や協力することの楽しさを学べる点で、子供向けのプログラミング学習の入門として非常におすすめです。元教師の方々にとって、子供たちが目を輝かせながら協力し合う姿は、きっと大きな喜びとなるでしょう。ぜひ、地域の子供たちやご家族で、この楽しいプログラミング体験に挑戦してみてください。