カードやブロックを並べて遊ぼう!オフラインで学ぶ「並べ替え」 プログラミング的思考を育むグループ活動
はじめに
プログラミングと聞くと、難解なコードをコンピューターに入力するイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、プログラミングの考え方、つまり「プログラミング的思考」は、コンピューターを使うことだけを指すわけではありません。物事を順序立てて考えたり、効率の良い手順を見つけたり、複雑な問題を小さな部分に分解したりする力は、日常生活の様々な場面で役立ちます。
そして、このプログラミング的思考は、特別な道具を使わなくても、身近な遊びを通して楽しく育むことができます。今回は、カードやブロックなどを使った「並べ替え」の遊びに焦点を当ててご紹介します。これは、コンピューターが情報を整理する際に行う基本的な処理の一つであり、プログラミングの基礎となる考え方を体験できる素晴らしい機会となります。グループで協力して取り組むことで、子供たちのコミュニケーション能力や協調性も育まれます。
「並べ替え」とは? プログラミングとの繋がり
私たちの身の回りには、「並べ替え」が必要な場面がたくさんあります。例えば、本を高さ順に棚に並べたり、洗濯物を種類別に分けたり、クラスで身長順に整列したりすることは、すべて並べ替えの活動です。
コンピューターの世界でも、情報を特定のルールに従って並べ替える作業は非常に重要です。これを「ソート」と呼びます。例えば、オンラインショップで商品を価格の安い順に表示したり、検索結果を関連性の高い順に並べたりする際に、このソートという技術が使われています。
この「並べ替え」をどのように行うか、どのような「手順(アルゴリズム)」で並べれば一番効率が良いかを考えることは、まさにプログラミング的思考の訓練になります。「どのようなルールで並べるか」「どのような順番で作業を進めるか」「どうすれば間違いなく並べられるか」といった思考プロセスは、プログラムを作る際の基本的な考え方と共通しています。
身近なものでできる「並べ替え」ゲームのアイデア
ここでは、特別な準備がほとんどいらない、簡単な「並べ替え」ゲームのアイデアをいくつかご紹介します。グループでの活動を想定しています。
準備するもの
- トランプ、かるた、花札などのカード類
- サイズの違うブロック、積み木
- 色鉛筆、クレヨン
- 様々な種類のボタンやビーズ
- 動物や乗り物などの絵が描かれたカード
- 新聞や雑誌の切り抜きなど
これらのうち、手軽に準備できるものを選びましょう。
遊び方例1:簡単なルールで並べてみよう
最も基本的な並べ替え活動です。
- 準備: 並べ替えに使うものを全員に配るか、テーブルの中央に置きます。例えば、トランプなら一人に数枚ずつ配る、またはまとめて置く。
- ルールの設定: どのようなルールで並べるかを決めます。「数字の小さい順に並べましょう」「高さの高い順に積みましょう」「色の濃い順に並べましょう」など、分かりやすいルールを設定します。
- 並べ替えの実行: 設定したルールに従って、カードやブロックなどを並べてもらいます。
- 確認と振り返り: 正しく並べられたかを確認します。もし間違いがあれば、どこで間違えたか、どうすれば正しく並べられるかを一緒に考えます。
グループでのポイント: 全員で協力して一つの山を並べる、または小さなグループに分かれて競争するなど、取り組み方を工夫できます。協力する場合は、「〇〇さんは△△のカードを集めて」「ぼくは数字の小さい方から並べるね」のように、自然な役割分担や声かけが生まれることがあります。
遊び方例2:ルールを工夫して難易度アップ
少し複雑なルールに挑戦してみましょう。
- ルールの設定: いくつかの条件を組み合わせたルールを設定します。「まず色で分けて、それから同じ色の中ではサイズ順に並べましょう(例:赤い大きいブロック、赤い小さいブロック、青い大きいブロック…)」「動物のカードは前に、乗り物のカードは後ろに置いて、それぞれ五十音順に並べましょう」など、二段階、三段階の並べ替えに挑戦します。
- 並べ替えの実行: 設定した複雑なルールに従って並べてもらいます。
- 確認と振り返り: ルール通りに並べられているかを確認します。難しくなるほど、途中で混乱したり、間違えたりする可能性が高まります。どこで迷ったか、なぜ間違えたかを一緒に考え、ルールを正確に理解し適用する練習をします。
グループでのポイント: 複雑なルールを理解し、グループ内で共有することが重要になります。「今のルールは〇〇さんのカードを△△に置くんだよね?」のように、互いに確認しながら進めることで、ルールの理解が深まります。
遊び方例3:どう並べるのが一番速いかな?
並べ替えの手順(アルゴリズムの基礎)に目を向ける活動です。
- 課題提示: 同じカードの山やブロックのセットを複数用意し、「どうすれば一番早く、正確に並べられるか、グループで話し合ってやってみよう」と課題を出します。
- 手順の検討と実行: 各グループで並べ替えの方法を話し合います。「端から順番に比べていく」「真ん中あたりから並べ始める」「まず大体分けてから細かく並べる」など、様々なアイデアが出るかもしれません。話し合った手順で実際に並べ替えを行います。
- 結果の共有と分析: それぞれのグループがどのような手順で並べたか、どのグループが一番速かったかなどを共有します。なぜその手順にしたのか、速くできたのはなぜか、逆に難しかった点はどこかなどを話し合います。
グループでのポイント: 「どんなやり方があるかな?」「このやり方だと、どこが大変かな?」など、意見を出し合い、試行錯誤する過程そのものが学びになります。グループ内で異なる意見が出た場合も、どのように合意形成するかを体験します。
この活動から学べること(教育的意義)
この「並べ替え」の遊びを通して、子供たちは様々な能力を育むことができます。
- 論理的思考力: 設定されたルールに従って、正確に判断し、物を配置する過程で論理的に考える力が養われます。
- 順序立てて考える力(シーケンス): 並べ替えを完了するために必要な一つ一つの手順を考え、実行する中で、物事を順序立てて考える力が身につきます。
- 問題解決力: より早く、より正確に並べるにはどうすれば良いかを工夫する過程で、問題を見つけ、解決策を考える力が育まれます。
- 抽象化の基礎: カードの種類やブロックのサイズといった具体的な要素から、「数字の大小」「色の濃さ」といった並べ替えの「基準」を見出すことは、抽象的に物事を捉えることにつながります。
- 集中力と粘り強さ: 正確に並べるためには集中力が必要です。また、うまくいかない場合でも、繰り返し挑戦する中で粘り強さが培われます。
- 協調性・コミュニケーション能力: グループで協力し、互いに教え合い、話し合いながら目標を達成する経験は、社会性を育む上で貴重です。
これらの力は、将来プログラミングを学ぶ上での土台となるだけでなく、学校での学習や日常生活、さらには将来社会に出た際にも必ず役に立つ汎用的な能力です。
まとめ
「並べ替え」の遊びは、身近なものを使って、プログラミングの基礎となる考え方を楽しく学べるオフラインアクティビティです。単に物を順番に並べるだけでなく、ルールを理解し、手順を考え、どうすれば効率よくできるか工夫する過程そのものが、プログラミング的思考を育みます。
特にグループで取り組むことで、子供たちは互いに学び合い、協力することの楽しさを体験できます。特別なツールや環境は必要ありません。ぜひ、お孫さんや地域の子どもたちと一緒に、手軽な「並べ替え」ゲームを通して、遊びながら学ぶプログラミングの世界を体験してみてください。