Scratchでグループ学習:協力して作るオリジナルクイズ
遊びながら学ぶプログラミング:みんなで楽しむクイズづくり
子供たちが楽しみながらプログラミングの考え方に触れる方法は数多く存在します。その中でも、グループで協力して一つのものを作り上げる活動は、技術的なスキルだけでなく、協調性やコミュニケーション能力も育む貴重な機会となります。今回は、世界中で活用されているビジュアルプログラミングツール「Scratch(スクラッチ)」を使って、子供たちがオリジナルのクイズを作成するグループ学習のアイデアをご紹介します。
この活動は、プログラミングに馴染みのない大人でも比較的容易に導入でき、子供たちが主体的に取り組める工夫が詰まっています。
なぜクイズづくりがプログラミング学習に良いのか
クイズづくりには、プログラミングの基本的な考え方がたくさん含まれています。
- 順序立てて考える(シーケンス): 問題を出して、答えを受け付け、正解かどうかを判定し、結果を表示するという一連の流れを考える必要があります。
- 条件によって動きを変える(条件分岐): 入力された答えが「正解」か「不正解」かによって、表示するメッセージや音を変える必要があります。
- 情報を覚える(変数): クイズの点数を記録しておくためには、「変数」と呼ばれる、数値などを一時的にしまっておく「箱」のような機能を使うと便利です。
これらの要素は、プログラミングの基礎を学ぶ上で非常に重要です。さらに、グループでクイズのテーマや問題を考えるプロセスは、子供たちの知識を整理し、学びを深めることにも繋がります。
グループでクイズづくりに取り組むメリット
一人でプログラミングすることも楽しいですが、複数人で協力して行うことで、さらに多様な学びが生まれます。
- アイデアの共有: クイズのテーマや問題、キャラクターの動きなどについて、お互いにアイデアを出し合うことで、一人では思いつかないような面白い作品が生まれる可能性があります。
- 役割分担: 問題を作る人、正解・不正解を判定するプログラムを作る人、画面のデザインを担当する人など、得意なことや興味のあることに応じて役割を分担できます。これにより、チームとして協力する経験が得られます。
- 問題解決: プログラムが思ったように動かないとき、みんなで協力して原因を探り、解決策を見つけ出す過程は、問題解決能力を育みます。
準備するもの
この活動を始めるために必要なものはシンプルです。
- インターネットに接続できるパソコンまたはタブレット: 子供たちの人数に合わせて複数台あると、グループで同時に作業できます。
- Scratchのウェブサイトへのアクセス: Scratchは無料で利用できます(https://scratch.mit.edu/)。アカウントを作成すると作品を保存できますが、必須ではありません。
- クイズのテーマや問題を考えるための筆記用具と紙: プログラミングを始める前に、クイズの内容を整理するのに役立ちます。
グループ活動の進め方
ここでは、子供たちが協力してクイズを作るための基本的な手順をご紹介します。進行役の大人の方は、これらのステップを参考に、子供たちの様子を見ながら柔軟に進めてください。
ステップ1:クイズのテーマと問題決め
まずは、グループで話し合い、どんなテーマのクイズを作るか決めます。子供たちの好きなもの(動物、乗り物、アニメなど)や、最近学習したこと(歴史、算数など)から選ぶと興味を持って取り組めます。
次に、クイズの問題とそれに対する正解・不正解の内容を具体的に考え、紙に書き出してみましょう。複数人で協力して、それぞれの知識を持ち寄るのも良い方法です。例えば、「問題係」と「答え係」のように役割を分担するのも面白いでしょう。
ステップ2:Scratchでプロジェクトを作成する準備
Scratchのウェブサイトを開き、「作る」ボタンをクリックして新しいプロジェクトを始めます。画面の背景を選んだり、登場するキャラクター(スプライトと呼びます)を選んだり、自分たちで絵を描いたりして、クイズの画面をデザインします。ここでも、みんなで話し合って決めることが大切です。
ステップ3:問題を表示して答えを受け付ける
選んだキャラクターにクイズの問題を話させるプログラムを作ります。Scratchのブロックの中には、「〇〇と言う」や「〇〇と聞いて待つ」といったものがあります。「〇〇と聞いて待つ」ブロックを使うと、キャラクターが問題を表示し、子供たちがキーボードで答えを入力するのを待つことができます。
ステップ4:正解・不正解を判定する
子供たちが入力した答えが、ステップ1で決めた正解と合っているか判定するプログラムを作ります。ここで「もし〜なら、△△をする。そうでなければ□□をする。」という「条件分岐」の考え方を使います。
入力された答えと正解を比べるブロックや、「もし」のブロックを組み合わせて、「答えが正解と同じなら『せいかい!』と表示する」、「そうでなければ『まちがい!』と表示する」といった動きを作ります。正解や不正解のときに音を鳴らしたり、キャラクターの見た目を変えたりする工夫もできます。
ステップ5:複数の問題に挑戦する(応用)
一つの問題ができるようになったら、同じようにして二つ目、三つ目の問題を追加してみましょう。クイズ全体の流れを考えて、正解したら次の問題に進むようにプログラムを繋げていきます。
さらに、「変数」を使って正解した数を数え、最後に点数を発表するプログラムを追加すると、より本格的なクイズになります。これも、グループで協力して取り組むのに適した部分です。
ステップ6:作ったクイズを発表し合う
完成したクイズは、グループ内で発表し合ったり、他のグループに遊んでもらったりしましょう。自分たちが作ったもので友達が楽しんでくれる経験は、子供たちにとって大きな喜びとなります。また、他のグループの作品を見ることで、新しいアイデアや工夫に気づくこともあります。
グループ活動を成功させるためのヒント
- 大人はファシリテーターに徹する: 子供たちが自分たちで考え、試行錯誤するのを見守り、必要に応じてヒントを与えたり、技術的なサポートをしたりします。答えをすぐに教えるのではなく、「どうすればそうなるかな?」「どこがうまくいかないかな?」と問いかけることで、子供たちの考える力を引き出します。
- 完璧を目指さない: 最初から凝ったものを作ろうとせず、簡単なクイズから始めて、徐々に要素を追加していくことをお勧めします。子供たちの興味やペースに合わせて進めることが大切です。
- 全員が参加できるように配慮する: グループ内で役割が偏らないよう、全員が何らかの形でプロジェクトに関われるように促します。絵を描くのが好きな子には画面デザイン、クイズの内容を考えるのが好きな子には問題作成など、それぞれの得意なことを生かせるように声かけをします。
この活動から得られる学び
このクイズづくりを通したグループ学習は、子供たちに以下のような様々な力を育む機会となります。
- 論理的思考力と問題解決力: プログラムを組み立て、エラーの原因を探し、解決策を見つける過程で養われます。
- 創造性: クイズのテーマ、問題の内容、画面デザイン、キャラクターの動きなど、自由に発想して形にする力が育ちます。
- 協調性とコミュニケーション能力: グループ内で話し合い、アイデアを共有し、役割を分担して協力する経験を通して、チームワークの大切さを学びます。
- 知識の定着: クイズの問題を考え、他の人に教える準備をすることで、元となる知識がより深く定着します。
まとめ
Scratchを使ったオリジナルのクイズづくりは、子供たちが遊び感覚でプログラミングの基礎に触れながら、グループで協力する楽しさを学べる優れた活動です。準備も比較的簡単で、少人数から大人数まで幅広いグループで実施できます。
ぜひ、身近な子供たちと一緒に、知識と工夫が詰まったオリジナルのクイズづくりに挑戦してみてください。子供たちの「できた!」という達成感と、仲間と協力する喜びを間近で見ることができるでしょう。