Scratchで観察記録!みんなで作る動く図鑑
プログラミングで広がる学びの世界
プログラミング学習は、コンピュータに指示を出す技術を学ぶだけでなく、子供たちの思考力や創造性、問題解決能力など、将来にわたって役立つ多様な能力を育む可能性を秘めています。そして、その学びは決して難解なものである必要はありません。身近な出来事や興味のあることを題材にすることで、遊び感覚で楽しく取り組むことができます。
この記事では、身近な自然や生活の中の「観察」をテーマに、ビジュアルプログラミングツール「Scratch」を使ってグループで「動く図鑑」を作るアイデアをご紹介します。特別な準備はほとんど不要で、子供たちが協力しながら主体的に学べる活動です。
Scratchを使った「動く図鑑」づくりとは
この活動は、子供たちが身近な対象(植物、動物、天気現象など)を観察し、その特徴をScratchのプログラムを使って表現し、グループで一つの「動く図鑑」としてまとめるものです。
例えば、「公園の生き物」をテーマにした場合、アリやチョウ、ダンゴムシなどを観察し、それぞれの見た目や動き、鳴き声、生息場所といった情報をScratchで表現します。ただ絵を描くだけでなく、スプライト(キャラクター)に動きをつけたり、音を加えたり、クリックすると説明が表示されたりといった「動きのある」「対話的な」図鑑を作成することができます。
グループで取り組むことで、情報収集、表現方法の検討、プログラミング、作品の統合といった様々な工程を分担し、協力しながら進めることができます。
活動の準備
この活動を始めるために必要なものは、ご家庭や地域の学習グループで比較的容易に準備できるものです。
- インターネットに接続されたパソコンまたはタブレット: Scratchはウェブブラウザ上で動作するため、特別なソフトウェアのインストールは必須ではありません。
- Scratchのウェブサイトへのアクセス: scratch.mit.edu にアクセスします。作品を保存したり共有したりする場合は、アカウントを作成すると便利ですが、必須ではありません。
- 観察対象: 身近な自然や生活の中にあるもの(例:庭の植物、公園の虫、空の雲、家の周りの音など)。実際に観察に出かけたり、事前に写真や動画を用意したりしても良いでしょう。
- (必要に応じて)観察メモ用のノートやカメラ: 観察したことや気づいたことを記録するために活用できます。
特別なプログラミング用教材を購入する必要はなく、すぐに始められる手軽さがあります。
ステップバイステップで進める動く図鑑づくり
グループで協力しながら、以下のステップで活動を進めることができます。
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テーマと観察対象を決める:
- グループで話し合い、図鑑のテーマを決めます。例:「春に見られる花」「雨の日の生き物」「台所にあるもの」など、子供たちの興味関心に合わせた身近なテーマが良いでしょう。
- テーマに沿って、図鑑に載せたい対象をいくつか選びます。例:「チューリップ」「カタツムリ」「カエル」「おたまじゃくし」「炊飯器」「冷蔵庫」などです。
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観察と情報収集:
- 選んだ対象を実際に観察したり、図鑑やインターネットで調べたりして、特徴を詳しく調べます。
- どのような見た目か、どのように動くか、どんな音がするか、どこにいるか、何をするかなど、気づいたことや調べたことをメモしたり、写真を撮ったりします。Scratchでどのように表現したいかアイデアを出し合います。
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Scratchで表現方法を考える:
- それぞれの対象について、Scratchでどのように表現するかグループで相談します。
- 例:「アリは黒いスプライトにして、小さくたくさん動かそう」「カエルのスプライトに 'げろげろ' という音をつけよう」「チューリップは赤と白の種類を作って、クリックしたら名前が出るようにしよう」など、自由な発想でアイデアを出し合います。
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役割分担とプログラミング:
- グループ内で役割を分担し、それぞれが担当の対象や表現要素(例:スプライトの絵を描く担当、動きのプログラムを作る担当、音や説明を加える担当)を受け持ち、Scratchでプログラミングを始めます。
- Scratchのブロックを組み合わせることで、「〇歩動かす」「コスチュームを〇番にする」「〇秒待つ」「〇〇と言う」「〇〇の音を鳴らす」といった簡単な指示を組み立てることができます。
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作品の統合と調整:
- それぞれが作ったスプライトやプログラムのパーツを、一つのScratchプロジェクトに集めて統合します。
- みんなで協力して、作品全体がスムーズに動くか、情報が正しく表示されるかなどを確認し、調整します。図鑑として見やすいように、背景を加えたり、スプライトの配置を工夫したりします。
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発表会:
- 完成した「動く図鑑」をグループ内で発表します。
- 作品を見せながら、観察して発見したこと、プログラミングで工夫した点、難しかったこと、グループで協力して良かったことなどを発表し、お互いの作品について感想を伝え合います。
この活動で育まれる力
「動く図鑑」づくりは、子供たちに以下のような様々な力を育む機会を提供します。
- 観察力と探求心: 身近な世界に興味を持ち、注意深く観察し、疑問を持つ姿勢が養われます。
- 表現力と創造性: 観察したことや考えたことを、プログラミングという新しい手段を使って自由に表現する力が育まれます。単に事実を記録するだけでなく、動きや音、インタラクションを加えることで、創造的な表現が可能になります。
- 論理的思考力: プログラミングの過程で、物事を順序立てて考え、原因と結果の関係を理解し、問題を解決するための手順を考える力が養われます。
- 協調性・コミュニケーション能力: グループで一つの目標に向かって協力し、アイデアを共有し、役割分担する経験を通じて、協調性やコミュニケーション能力が育まれます。
- 情報収集・整理能力: 観察や調べ学習で情報を集め、それをScratchで表現するためにどのように整理し、構成すれば良いかを学ぶことができます。
まとめ
Scratchを使った「動く図鑑」づくりは、子供たちが遊び感覚でプログラミングに触れながら、身近な世界への興味を深め、観察力や表現力、そして友達と協力する大切さを学ぶことができる活動です。
技術的な難しさは少なく、準備も手軽なので、プログラミング学習が初めてという方でも安心して取り組むことができます。ぜひ、子供たちと一緒に身近な「面白い」を見つけて、プログラミングで表現する楽しさを体験してみてください。観察する対象やテーマを変えたり、Scratchのより高度な機能に挑戦したりすることで、活動の幅を広げ、繰り返し楽しむことも可能です。