遊びながら学ぶ!身近なもので作るストップモーションアニメ Scratchを使ったグループ制作
身近なもので作ろう ストップモーションアニメ
プログラミング学習と聞くと、コンピューターの画面に向かってコードを入力するイメージがあるかもしれません。しかし、「遊びながら学ぶ」ためには、子供たちが五感を使い、身近なものに触れながら取り組める活動が効果的です。今回は、身近にあるおもちゃや粘土、あるいは描いた絵などを使って、みんなで協力しながらストップモーションアニメを作るアイデアをご紹介します。この活動は、プログラミングの基本的な考え方である「順序立てて考える力」や「繰り返し」の概念を、視覚的に分かりやすく学ぶことができるため、プログラミングが初めてのお子さんや、グループでの活動に適しています。
ストップモーションアニメとは何か、なぜプログラミングに繋がるのか
ストップモーションアニメとは、少しずつ動かした物体をコマ撮りし、それらの画像を連続して再生することで、物体がまるで自分で動いているかのように見せるアニメーション技法です。パラパラ漫画をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
このストップモーションアニメ作りが、なぜプログラミング学習に繋がるのでしょうか。それは、アニメーションを作る過程そのものが、プログラミングにおける「アルゴリズム」(処理の手順)や「シーケンス」(一連の流れ)を考える訓練になるからです。
- 動きを分解して考える: 「人形が歩く」という一つの動きを、足の動き、腕の動き、体の傾きなど、非常に小さな「コマ」ごとの状態に分解して考えます。これは、複雑なタスクを小さなステップに分解するというプログラミングの基本的な考え方です。
- 順序立てて並べる: 撮影した写真を、動きが滑らかに見えるように正しい順序で並べます。これは、プログラムの命令を正しい順序で記述することに対応します。
- 表示時間を調整する: 各コマをどれくらいの時間表示するか(フレームレート)を調整することで、動きの速さをコントロールします。これは、プログラムにおける処理のタイミングを制御することに似ています。
- 繰り返しの概念: ある一定の動き(例えば一歩歩く動作)を繰り返すことで、歩き続けるアニメーションができます。これは、プログラミングの「繰り返し処理」(ループ)の考え方に繋がります。
このように、ストップモーションアニメ作りは、コンピューターを使わない部分(物理的な物の動きを考える、撮影する)と、デジタルなツール(今回はScratch)を使って編集・再生する部分を組み合わせることで、楽しみながらプログラミング的思考を養うことができる活動なのです。
グループで取り組む楽しさと学び
ストップモーションアニメ作りは、グループで取り組むことでさらに多くの学びが得られます。それぞれの得意なことや興味に合わせて役割分担をすることで、協力しながら一つの作品を作り上げる達成感を味わえます。
- ストーリー担当: どんな物語にするか、登場人物はどうするかなどを話し合い、アイデアをまとめます。創造力や表現力が育まれます。
- キャラクター・背景担当: 物語に登場するキャラクターや背景を、粘土で作ったり、絵を描いたり、身近な物を集めたりして準備します。工夫する力や造形力が養われます。
- 撮影担当: キャラクターを少しずつ動かしながら写真を撮ります。根気強さや、動きを観察する力が求められます。カメラを固定する方法などを工夫することも学べます。
- Scratch操作担当: 撮影した写真をScratchに取り込み、順番に並べ、動きを調整します。デジタルツールを操作するスキルや、手順通りに作業を進める力が身につきます。
- みんなで話し合う: どの役割を担当するかにかかわらず、アニメーションがスムーズに見えるにはどうしたら良いか、どんな音をつけたら面白いかなどをみんなで話し合い、試行錯誤します。コミュニケーション能力や問題解決能力が育まれます。
このように、グループで取り組むことで、単にアニメを作るだけでなく、協力することの大切さや、一人ではできないこともみんなで力を合わせれば実現できるという経験が得られます。
準備と基本的な手順(Scratchを使う場合)
この活動に必要な準備は比較的少なく、手軽に始めることができます。
必要なもの
- パソコン: Scratchデスクトップ版またはScratchウェブサイトが使える環境が必要です。
- カメラ: スマートフォン、タブレット、デジタルカメラなど、写真が撮れるものであれば何でも構いません。パソコンに接続できるもの、または写真をパソコンに転送できるものが必要です。
- キャラクターと背景: 人形、ミニカー、積み木、粘土、折り紙、描いた絵、あるいは身近にある様々な物を使えます。動かすものと、それを配置する場所(背景)を準備します。
- カメラを固定するもの(推奨): 三脚や、箱の上に置くなど、カメラが動かないように固定できると、よりスムーズなアニメーションになります。
基本的な手順
- 物語とキャラクターの準備: どんなお話にするか、誰(何)が登場するかを決め、キャラクターや背景を準備します。シンプルな短いお話から始めると良いでしょう。
- 撮影場所の準備: 背景となる場所を決め、キャラクターを配置します。カメラを固定し、位置や角度を決めます。一度決めたカメラの位置は、撮影中は動かさないようにします。
- 撮影(コマ撮り):
- キャラクターを最初の状態に置きます。
- 写真を一枚撮ります。
- キャラクターをほんの少しだけ動かします。
- 写真を一枚撮ります。
- この「少し動かす」「写真を撮る」という作業を、物語の終わりまで根気強く繰り返します。少しずつ動かすのがポイントです。
- Scratchでの作業:
- Scratchを起動し、新しいプロジェクトを作成します。
- 「コスチューム」タブを開き、「コスチュームをアップロード」から撮影した写真を順番に取り込みます。写真のファイル名が連番になっていると便利です。
- スプライト(初期設定ではネコ)のコスチュームが、取り込んだ写真のコマになります。
- コードを書きます。「イベント」ブロックの「(旗)がクリックされたとき」から始めます。
- 「見た目」ブロックの「次のコスチュームにする」を配置します。
- 「制御」ブロックの「〇秒待つ」を配置し、待ち時間を調整します。例えば0.1秒や0.2秒にすると、動きが速くなります。
- 「次のコスチュームにする」と「〇秒待つ」のセットを、「制御」ブロックの「〇回繰り返す」や「ずっと」ブロックで囲みます。繰り返す回数は撮影した写真の枚数やアニメーションの長さに合わせます。
- 必要であれば、「音」ブロックを使って効果音や音楽を追加することもできます。
- 再生と調整: 緑の旗をクリックしてアニメーションを再生し、動きを確認します。速すぎたり遅すぎたりする場合は、「〇秒待つ」の値を調整します。動きがぎこちない場合は、撮影に戻って撮り直すことも検討します。
- 完成: 満足のいくアニメーションができたら完成です。
教育的な意義と子供たちの成長
このストップモーションアニメ作りは、子供たちに多様な学びを提供します。
- 創造性と表現力: 自由な発想で物語やキャラクターを生み出し、それを形にする過程で創造力や表現力が養われます。
- 論理的思考力と問題解決力: 複雑な動きを細かなステップに分解し、正しい順序で並べる作業は、論理的に物事を考える力を育みます。また、アニメーションがうまくいかない原因を探し、どうすれば改善できるかを考える過程で、問題解決能力が身につきます。
- 手順を追う力と計画性: 撮影からScratchでの編集まで、複数のステップを経て一つの作品を作り上げるには、計画を立て、手順通りに進める力が必要です。
- 集中力と根気強さ: 地道なコマ撮り作業や、Scratchでの細かな調整には、集中力と根気強さが求められます。
- 協力とコミュニケーション: グループで役割分担し、互いに意見を交換しながら一つの目標に向かうことで、協調性やコミュニケーション能力が育まれます。
- デジタルツールへの理解: Scratchというプログラミングツールを、単なるゲームとしてではなく、自分のアイデアを形にするための強力なツールとして体験できます。
まとめ
ストップモーションアニメ作りは、特別な機材や専門知識がなくても、身近なものとScratchを使って、子供たちが「遊び」として楽しみながらプログラミングの基本的な考え方や、問題解決、協力といった大切なスキルを身につけられる素晴らしい活動です。元教師の方や、地域の子どもたちに新しい学びの機会を提供したいとお考えの方にとって、準備が簡単で、グループでも取り組みやすいため、ぴったりのアイデアの一つと言えるでしょう。ぜひ、子供たちと一緒に、身近なものたちが画面の中で動き出す魔法のような体験をしてみてください。この活動を通して、子供たちの創造性や論理的な思考力が大きく育まれるはずです。