宝の地図をプログラミング!オフラインで楽しむ手順ゲーム グループ活動アイデア
はじめに
プログラミングと聞くと、難しそうな専門知識が必要だと感じるかもしれません。しかし、プログラミングで大切な考え方、いわゆる「プログラミング思考」は、特別なコンピューターツールを使わなくても、日頃の遊びを通して育むことができます。プログラミング思考とは、物事を順序立てて考えたり、問題を解決する方法を論理的に組み立てたりする力のことです。
この記事では、身近なものを使って「宝の地図」をテーマにした遊びを通して、子供たちがプログラミングの基本的な考え方を楽しく学べるグループ活動アイデアをご紹介します。準備も簡単で、複数人で協力しながら取り組むことができるため、地域の子供たちの集まりや家族での活動にも適しています。
宝の地図ゲームとは
このゲームは、紙に書かれた「宝の地図」を使って行う、オフライン(コンピューターを使わない)でのプログラミング思考ゲームです。参加者は宝の場所を目指し、事前に用意された「指示カード」を順番に並べて「プログラム」を作ります。そして、そのプログラム通りに地図の上を進んでいきます。
プログラミングにおける「プログラム」は、コンピューターに対する「指示」の集まりです。このゲームでは、指示カードがその役割を果たします。また、宝の場所までたどり着けない場合は、指示の順番や内容が間違っている、つまり「バグ」があると考え、どこが間違っていたかをみんなで話し合いながら修正します。この修正する作業が「デバッグ」です。
このように、シンプルな遊びの中に、プログラミングの非常に基本的な要素が含まれています。
なぜこの遊びでプログラミング思考が育めるのか
この宝の地図ゲームは、子供たちの以下のような能力を育むことに役立ちます。
- 順序立てて考える力(論理的思考力): 宝の場所へたどり着くためには、どのような指示をどのような順番で並べれば良いかを考える必要があります。「まず右に曲がって、次にまっすぐ3マス進む」といったように、具体的な手順を考える練習になります。
- 問題解決力: 指示通りに進んでも宝にたどり着けない場合、原因(バグ)を見つけ出し、どうすればゴールできるかを考え、解決策を実行する過程で、問題解決の能力が養われます。
- 正確な指示を出すことの重要性の理解: あいまいな指示では、指示通りに進んでも意図した結果にならないことを体験することで、正確に、具体的に指示を出すことの大切さを学びます。
- 抽象的な概念の理解: 「プログラム」「命令」「実行」「バグ」「デバッグ」といったプログラミングの基本的な概念を、ゲームという具体的な体験を通して感覚的に理解することができます。
準備するもの
この遊びに必要なものは、特別なものではありません。
- 大きな紙または複数枚の紙: 地図を描くために使います。模造紙やチラシの裏なども利用できます。複数枚を貼り合わせても良いでしょう。
- ペンやマーカー: 地図の線やマス、宝のマークなどを描きます。
- 指示カード用の紙: 名刺サイズやトランプくらいのサイズの紙を用意します。不要になった厚紙や段ボールを切っても良いでしょう。
- ハサミ: 指示カードを切り出す際に使用します。
- ゲームで使うコマやマーク: 子供たちが地図の上を進む際に、自分の現在地を示すためのものです。積み木や消しゴム、おはじきなど、身近にあるもので構いません。
- (オプション)障害物: 地図の上に置いて、通れない場所を示すためのものです。ブロックや小さな箱などを使います。
遊び方・手順(グループ向け)
- グループ分け: 参加する子供たちをいくつかのグループに分けます。1グループ3〜5人程度が適切でしょう。
- 地図の準備:
- 大きな紙の上に、マス目を書きます。このマス目が、ゲームボードの役割を果たします。
- 地図の出発点と宝の場所(ゴール)を決め、目立つようにマークします。
- 必要に応じて、通れない障害物を配置する場所を決めます。障害物は実際にブロックなどをマスの上に置いても良いですし、地図に描いても構いません。
- 地図作りは、指導する大人が事前に用意しても良いですし、子供たちのグループに任せても面白いでしょう。グループで協力して独自の地図を作ることで、創造性や話し合いの力が育まれます。
- 指示カードの作成:
- このゲームで使う「命令」の種類を決めます。例:「まえに1マスすすむ」「みぎにまがる」「ひだりにまがる」「うしろに1マスすすむ」「ジャンプする(障害物を飛び越える)」など。最初はシンプルな数種類の命令から始めると良いでしょう。
- 決めた命令を、指示カード用の紙に一つずつ書きます。同じ命令のカードを複数枚作っておきます。例えば、「まえに1マスすすむ」はたくさん使う可能性が高いので、多めに用意します。命令の内容が分かるように、分かりやすいイラストや矢印を添えると、小さな子供でも理解しやすくなります。
- 指示カードの作成も、グループで協力して行っても良いでしょう。
- 役割分担とゲーム開始:
- 各グループ内で役割分担をします。例えば、「指示を考える人(プログラマー)」「指示通りに進む人(ロボット)」「指示カードを並べる人」「記録係」などです。これらの役割はゲーム中に交代しながら行うと、全員が様々な視点を体験できます。
- グループは出発点にコマを置きます。
- 指示を考える人が、宝の場所へたどり着くための手順を考え、必要な指示カードを選びます。
- 選んだ指示カードを、実行する順番に並べます。これが「プログラム」です。
- プログラムの実行:
- 指示通りに進む人(ロボット役)は、並べられた指示カードを前から順番に見て、その指示に従って地図上のコマを動かします。
- バグ発見とデバッグ:
- 指示通りに進んでも宝の場所にたどり着けなかった場合、それはプログラムに「バグ」がある状態です。
- グループ全員で、どの指示が間違っていたのか、どの指示が足りなかったのか、指示の順番は正しかったのかなどを話し合います。コマを最初に戻し、間違っていた部分の指示カードを入れ替えたり、追加したりしてプログラムを修正します(デバッグ)。
- 修正したプログラムで再度実行し、宝の場所を目指します。宝にたどり着けるまで、このデバッグの作業を繰り返します。
- ゲームの終了と発展:
- 無事に宝にたどり着けたらゲームクリアです。最も少ない指示カード数でクリアすることを目指す、といった目標設定も面白いでしょう。
- ゲームに慣れてきたら、障害物を増やす、使える指示カードの種類を限定する、地図を複雑にするなど、難易度を上げてみましょう。
- 別のグループが作った地図に挑戦するのも、異なる視点や考え方を学ぶ良い機会になります。
グループ活動で得られる学び
この宝の地図ゲームをグループで行うことで、プログラミング思考だけでなく、子供たちの非認知能力も育まれます。
- 協調性とコミュニケーション: 宝の場所へたどり着くという共通の目標に向かって、グループ内で協力し、活発に話し合いながら進める必要があります。意見を出し合い、相手の意見を聞き、合意形成を図る過程でコミュニケーション能力や協調性が養われます。
- 役割分担と責任感: それぞれの役割を果たすことで、チームに貢献する喜びや責任感を感じることができます。
- 他者への配慮: ロボット役の人が指示を理解しやすいように、分かりやすい指示を出すことや、指示カードを丁寧に並べることを通して、他者への配慮を学びます。
まとめ
プログラミング思考は、これからの時代を生きる子供たちにとって非常に重要な力です。しかし、それはコンピューターの画面の中だけで学ぶものではありません。今回ご紹介した「宝の地図」ゲームのように、身近なものを使ったオフラインでの遊びを通しても、十分にその基礎を育むことができます。
このゲームは、準備が手軽で、場所を選ばず、複数人で一緒に楽しみながら取り組むことができます。子供たちが協力して考え、試行錯誤し、問題を解決していく過程は、単に知識を詰め込むのではなく、生きる上で必要な力を育む貴重な体験となるでしょう。
ぜひ、ご家庭や地域の子供たちの集まりで、この「宝の地図」ゲームを取り入れてみてください。子供たちのキラキラした表情や、グループで協力し合う姿を見ることができるはずです。