Viscuitを使ったグループ活動:みんなで描いて動かすデジタル絵本作り
はじめに
子供たちがプログラミングに触れる最初のステップとして、「遊び」の要素を取り入れることは非常に有効です。特に、複数の子供たちが協力して一つの作品を作り上げる活動は、単に技術を学ぶだけでなく、コミュニケーション能力や協調性を育む素晴らしい機会となります。
本記事では、絵を描くような感覚で直感的にプログラミングができるツール「Viscuit(ビスケット)」を使った、グループでの「デジタル絵本作り」をご紹介します。特別な準備や専門知識はほとんど必要なく、パソコンやタブレットがあればすぐに始められる手軽さも魅力です。
Viscuit(ビスケット)とは
Viscuitは、日本の研究者によって開発された、小さな子供でも簡単に扱えるビジュアルプログラミング言語です。コードを書く代わりに、描いた絵に「メガネ」と呼ばれる仕組みを使って動きや変化をつけます。例えば、「この絵(左側のメガネ)が、こうなったら(右側のメガネ)、こう動く(矢印)」というように、絵と絵の関係性を設定することでプログラムを作ります。文字を読むのが難しい子供でも、直感的に操作できる点が大きな特徴です。
なぜViscuitで「デジタル絵本作り」なのか
Viscuitでデジタル絵本を作る活動は、子供たちの様々な能力を引き出します。
- 創造性と表現力: 自分たちが描いた絵や考えた物語を、デジタルな世界で自由に表現できます。
- 物語構成力: どのようなキャラクターが登場し、どんな出来事が起こり、物語がどう進むかを考える過程で、構成力を養います。
- プログラミング的思考: 絵をどう動かすか、どのような条件で変化させるかを考えることは、まさにプログラミングの基本的な考え方(論理的な順序、条件分岐など)を学ぶことに繋がります。絵が動く「メガネ」の仕組みを理解し、意図した動きを実現するために試行錯誤することは、問題解決能力の育成にも役立ちます。
- 協調性とコミュニケーション能力: グループで取り組む場合、役割分担をしたり、お互いのアイデアを出し合ったり、協力して作業を進める必要があります。これにより、自然とコミュニケーションが生まれ、協調性が育まれます。
活動を始めるための準備
Viscuitでデジタル絵本作りを始めるために必要なものは、以下の通りです。
- インターネットに接続できるパソコンまたはタブレット(複数台あるとグループ作業がスムーズに進みます)
- Viscuitのウェブサイトにアクセスする(特別なソフトのインストールは不要です)
- 必要に応じて、物語のアイデアを話し合うための紙やペン
準備はこれだけで完了です。Viscuitはウェブブラウザ上で動作するため、手軽に始めることができます。
デジタル絵本作りの具体的な進め方(グループ向けアイデア)
いくつかの子供たちでグループを作り、役割分担をしながらデジタル絵本を制作する手順の例をご紹介します。
- 物語のテーマとキャラクターを決める(10~15分)
- グループで話し合い、どんなお話を作るか、どんなキャラクターが登場するかを決めます。アイデアを紙に書き出したり、簡単な絵コンテを描いたりするのも良いでしょう。
- 例:「森に住む動物たちの冒険」「宇宙旅行」「不思議な生き物と友達になる話」など。
- 役割分担をする(5分)
- 子供たちの興味や得意なこと、人数に応じて役割を決めます。
- 例:
- 「絵を描く係」:キャラクターや背景の絵を描きます。
- 「メガネ係」:描いた絵に動きや変化をつける「メガネ」を作ります。
- 「物語・構成係」:物語の流れや、絵本全体の構成を考えます。
- 「発表係」:完成した作品を発表する練習をします。
- 固定せず、途中で役割を交代したり、一緒に作業したりしても構いません。
- 絵を描く(15~20分)
- Viscuitの画面上で、物語に必要なキャラクターや背景の絵を描きます。色鉛筆ツールや図形ツールなど、様々な機能を使って自由に描けます。
- 共同作業する場合、同じ作品内で複数の子供が同時に絵を描くことができます。
- メガネで動きをつける(20~30分)
- 描いた絵に「メガネ」を使って動きや変化を設定します。
- 例えば、「歩く絵」と「少し足が進んだ絵」をメガネで繋げると歩いているように見えたり、「キャラクターの絵」が「次のページのキャラクターの絵」に変わるメガネを作って場面転換を表現したりできます。
- シンプルな動きから始めて、慣れてきたら複雑な動きや条件付きの動き(例:この絵に触れたら別の絵に変わる)にも挑戦してみましょう。
- ページを繋げて物語にする(10~15分)
- Viscuitでは「めがね」を使ってページの遷移を設定できます。例えば、ページの端に「次のページへ」という絵を描き、その絵に触れたら次のページに飛ぶメガネを作ることで、絵本のようにページを進めることができます。
- 物語の流れに合わせて、どの絵をどのページに配置し、どのように次のページに進むかをグループで相談しながら決めます。
- 完成・発表(10分~)
- デジタル絵本が完成したら、グループみんなで試してみて、意図した通りに動くか確認します。
- 可能であれば、他のグループや大人に発表してみましょう。自分たちの作品を紹介することで、達成感や自信に繋がります。物語の説明や、どのように工夫したかなどを話すと、さらに良い経験になります。
グループで取り組むことの意義
この活動をグループで行う最大のメリットは、子供たちが自然と協力し合い、他者と関わることの重要性を学ぶ点にあります。一人の力では思いつかなかったアイデアが、複数人の意見交換によって生まれたり、困難な課題もみんなで知恵を出し合うことで乗り越えられたりします。
絵を描くのが好きな子、動きを考えるのが得意な子、物語を考えるのが得意な子など、それぞれの個性や得意なことを活かしながら、一つの目標に向かって協力する経験は、将来様々な場面で役立つ貴重な学びとなります。また、うまくいかない時にどう声をかけ合うか、意見が分かれた時にどう折り合いをつけるかといったコミュニケーション能力も同時に育まれます。
まとめ
Viscuitを使ったデジタル絵本作りは、子供たちが「遊び」として楽しみながら、プログラミングの基本的な考え方、創造性、そしてグループで協力することの大切さを学ぶことができる活動です。準備も手軽で、専門知識がなくてもサポートできるため、ご家庭や地域の集まり、放課後活動など、様々な場面で取り入れてみてはいかがでしょうか。
子供たちの自由な発想を大切にしながら、一緒にデジタル絵本の世界を楽しんでみてください。